ハロー、マイファーストレディ!

無心でサンドイッチを頬張っていると、征太郎がワイングラスを片手に、自分の分のサンドイッチを勧めてくる。

「そんなに美味いなら、俺の分も食べるか?」
「何言ってるの?あなたも料理全然食べてないでしょう?」
「俺は、一食くらい食べなくても平気だ。」
「そんなこと言ってるから、倒れるのよ。」
「何ヶ月前の話だ?今は、お陰様で健康そのものだ。誰かさんがうるさいからな。」

征太郎と一緒に暮らすようになってから、私は彼の悪しき生活習慣を改めさせることに力を注いでいた。

夜はしっかり眠ること。
三食ちゃんと食べること。
やはり、これが健康の基本だ。

ほとんど毎日、地元まで戻ってくるようになった征太郎に、少しでも睡眠時間を確保するために時間がないときは宿舎に泊まって来るように言っても、「ここの方がよく眠れる」と言って聞かなかったり。
何も食べずに帰宅した彼に、部屋のミニキッチンで夜食を作ろうとしているところを、無理矢理ベッドに引きずり込まれたり。
強引な性格で多忙を極める征太郎に、完璧にこの基本を守らせることなど至難の業だが、この数ヶ月うるさく世話を焼いてきたせいで、随分と彼の顔色は良くなってきたと思う。
先月の総裁選で勝利した朝川議員が政権を取ってから、征太郎は全ての役職を辞したため、じっくりと自分のペースで仕事を進められるようになったことも大きな要因かも知れない。

「健康で長生きしてもらわなくちゃ、約束守ってもらえなさそうだし。」
「それは、大丈夫だ。君をファーストレディにするまで、死ぬつもりはない。」
「時間が掛かることは否定しないのね。」
「じっくりやることにしたんだ。」

嫌味の応酬をしつつも、二人でにっこりと微笑み合う。
ちょっと前まで、お腹を空かせて、悲観的になっていた自分が嘘のようだ。
ちゃんと引っ張り上げて、私は私らしくあれば良いのだと言ってくれる人がいる。
それだけで、不思議と私は未来を向ける。

< 262 / 270 >

この作品をシェア

pagetop