ハロー、マイファーストレディ!

「悪かった。」
「違うの。ちょっと、びっくりしただけよ。ごめんなさい。」

素直に謝れば、彼女はやたらしおらしく、それでいて男らしい発言をした。

「どうせ、大切に守っていても仕方ないもの。」

そう言いながらも、彼女の涙はまだ止まらない。
精一杯強がる彼女を、そのまま抱き上げる。
俗に言う、お姫様抱っこなんて格好いいものじゃない。
親が子供にするような、正真正銘の“抱っこ”だ。

「もう何もしないから。ベッドで休めよ。」

そう言って、少しだけ離れたベッドへと運ぶ。
キングサイズのダブルベッドに彼女を横たえると、俺はベッドの端に腰を下ろす。
彼女の涙を指で拭った後、自然とその手は彼女の頭を撫でていた。


「せいぜい、馬鹿にすればいいわ。」

数分後、やっと憎まれ口を叩けるほどには落ち着いてきたらしい。彼女の頭を撫でながら、ゆっくり諭すように語りかけた。

「馬鹿になんてしない。」
「どうだか。」
「いいから、少し眠れよ。朝から色々あって疲れてるだろう?」
「誰のせいよ?」
「俺のせいだな。」 
「ホント、振り回されて大変だった。」
「だから、もう、寝ろ。」
「眠くないわよ。」

そう言いながらも、彼女の瞼はゆっくと下がっていく。

「どうせ、この先誰にも抱かれるつもりはないんだろう?」
「うん…」
「じゃあ、特別に俺だけには許せよ。」
「うん…」

眠りに落ちていく途中で、彼女は微かな返事を返す。
もうすでに、半分は夢の中だろう。

「俺も一生、君だけにするから。」

最後に囁いた言葉が、彼女に届いたかは分からなかった。
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