恋愛優遇は穏便に
仕事はしっかりやらないと迷惑がかかるから、各部署から来たメールの指示どおりに進めていった。

仕事をしている最中は政義さんは手出ししないというのがわかってから、落ち着いて仕事ができるようになった。

政義さんに確認してもらい、メールに資料を添付し送る。


「完成した……」


「お疲れ様」


政義さんが優しく響く低音の声にどきんとしながらも、細々とした作業をこなす。

気づくと就業時間が過ぎていた。


「そろそろ終わろうか、むつみチャン」


「あ、はい」


急いで勤務表に記載し、政義さんに渡す。


「集中するむつみチャンも素敵だね」


さらりと甘い言葉をかけられながら、サインしてくれた勤務表を手に取る。


「政義さん、そんなこと言わないでくださいよ。ますます仕事がしづらくなりますって」


「真剣な顔をする姿がきれいだなって思いながら、こちらも仕事ができて幸せってこと」


そういって、政義さんは目を細めて笑っていた。

わたしは自分の席に戻り、机の上に散らばる資料を片付ける。


「さて、ボクも終わろうかな」


そういうと、政義さんも机に広げた資料を棚に戻した。


「さて、片付いたかな。約束の二日目だね。今日も一緒にごはん食べてほしいんだけど」


「え、ええ」


「じゃあ、行こうか」


そういって、政義さんも身支度をして、何事もなかったかのように、わたしの指輪がはまっている右手をとり、手を握ると、一緒に会社を出た。
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