恋愛優遇は穏便に
気がつけば、わたしは見覚えのある部屋に寝かされていた。

「意外とお酒、弱いんだね」

政義さんが小さく低い声でつぶやいた。

「わ、私……夢でも見ていたんでしょうか。悪い夢を……」

「悪い夢、なんかじゃないと思うけど」

そういって政義さんが言い返してきた。

「夢、ですよね」

覚めてほしい夢だと思った。

「そういう顔、誰にでもするんだね」


大きな窓の外は夜の装いをほどこされ、街の明かりが点々と光っている。

政宗さんはそういうと背中を向けたまま肩を震わせて笑っている。

私は答えられなかった。

天井から差す蛍光灯がまぶしく、私と政義さんを照らす。

真っ白なクイーンサイズのベッドの真ん中に私、端にその人は座っている。

私は何も身につけていなかったので白いタオルケットにくるまり、政義さんはYシャツにだらしなくネクタイを緩めていた。


「たとえ間違いだったとしても」


「だって、それは」


そういって、政義さんは振り返って私の顔を満足げに眺めている。


「確認できなかった、だけ?」


「そうです」


「でも、気持ちよさそうだったけど」


政義さんに先手を打たれた。

返す言葉がみつからない。



「気に入ったよ、キミのこと」


シーツをぎゅっとつかんだ。

冷たさをはらんだその言葉に胸が苦しくなった。

たまらなくなって自分の右薬指に光る指輪に視線を注いだ。
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