恋愛優遇は穏便に
自宅についても涙がとまらなかった。

自分が悪い。

政義さんの策略にまんまと引っかかってしまったから。

結果的に、政宗さんを裏切ってしまったなんて。

仕事を引き受けなければ、政宗さんと一夜を共にして、そのまま会社へと向かっていたのかもしれない。

今は失ってしまった、右手の薬指にあった指輪の幻をみる。

どうしてなくしてしまったんだろう。

明日の会社で、どういう顔をして政宗さんに会ったらいいのか、わからなかった。

今夜、会いたかったのに。

目を閉じても、胸が苦しくなる。

もし、彼が政義さんんだったら、もっと強引に私を手なずけるのだろうか。

政宗さんのことを考えたいのに、なぜか気がつけば政義さんのことを考えてしまう。

どうして。

どうして、政宗さんじゃなくて、政義さんのことを。

眠ったのかどうなのかわからないまま、月曜日がやってきて、やっぱり眠れなかった。

支度をして、ふと、テーブルにあるスマホに目をむける。

さすがに政宗さんからメールが届いたりして、と思い、のぞいてみても、何も届いてはいなかった。

支度がすみ、出勤する。

外に出た瞬間、風が頬を撫でた。だいぶ風が冷たくなってきた。

通勤途中にみられる街路樹はだいぶ紅葉してきている。

だんだんと会社が近づくにつれ、私の緊張感が増す。

会社のロビーについて振り返っても、他のサラリーマンやOLの人ぐらいで、政宗さんらしい人はいなかった。

エレベーターに乗り、会社に向かい、営業所の扉を開け、ロッカールームに入る。

3日ぶりに袖を通す制服が何だか新鮮だった。

ドキドキと胸を躍らせながら、事務室の扉を開けた。
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