恋愛優遇は穏便に
「ホントはここで朝を迎えて一緒に会社へ向かう予定でしたが」


「名残惜しいですけど」


私の自宅マンションへ送ってもらう。


「ではまた明日。会社で」


「おやすみなさい」


人がいないことを見計らって、玄関前で軽くキスをした。

自宅のドアを開ける。

蒸し暑い部屋に戻ってきた。

急いでクーラーをつける。

この部屋を出る前は早く政宗さんに会いたくて何の服を着ようかとか、どんなものを食べようとかそればっかり考えていた。

それなのに。

自分のミスだ。

それなのに政宗さんに告げられないなんて。

政宗さんとは違った、艶っぽくて渋くて雄の部分が強そうなのに、なぜか受け入れられそうな雰囲気を醸し出している。

きっと今までいろんな女性を相手にしてきた経験からにじみ出たものなのかもしれない。

時期を見て、政宗さんに告げよう。

まさか政宗さんと間違えてお兄さんとキスしたなんて知ったら怒るだろう。

でも、別れを告げられたらどうしよう。

右手の薬指を見る。

蛍光灯の下での指輪の輝きは少しだけくすんでいた。
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