恋愛優遇は穏便に
午後2時を回ったところで、郡司さんが会社にやってきた。

応接室に通して、郡司さんにお茶を出すと、最近寒くなりましたねえ、お茶のおいしい季節になりましたね、なんていうよくある会話をしながら話が始まった。


「どうですか。仕事の調子は」


「ええ、大丈夫です」


「会社の環境や職場の仲間とはどうでしょう」


「え、ええ、なんとかやってます」


「それならいいんですけど。引き続きお願いします。あと、ここで話すのもなんですが、ついでといったらなんですけど、もう一社の話ですけど」


「……はい」


政義さんの会社のことか。

正直、ここで話したくなかったけれど、仕方なく話を聞くことにした。


「その後はどうですか? 僕らも森園さんの働きにはありがたい気持ちでいっぱいです」


「いえ、そんなことはありません」


「で、五十嵐室長からお話があったかと思いますが、契約満了時に入社は希望されるのでしょうか?」


「え……入社ですか」


「契約期間は3ヶ月になります。そのあと1ヶ月ごとの更新になっているんですが」


「9月からでしたよね。となると、今月が3ヶ月目ということになりますか?」


「ええ」


「今すぐ決めないといけませんか?」


「いえ、こちらの契約も残っていますが、こちらの契約も3月末で切れて、契約更新になりますけど。急がなくてもいいんですが、もし4月入社を希望であれば、人事のこともあるので、早急にお返事をいただきたいんですけど」


正社員の道を郡司さんから提示されるとは思ってもみなかった。
< 191 / 258 >

この作品をシェア

pagetop