恋愛優遇は穏便に
「あと1ヶ月、様子を見させていただいて、更新継続と社員の返事をするというのはダメでしょうか」


「まだ時間がありますから、それでも構いませんよ」


よかった。

ある程度の猶予をもらえた気がした。

でも、問題がある。

政義さんに先延ばしの件は伝わってしまうんだろうか。


「今の話、五十嵐室長にお伝えするんでしょうか」


「人材確保のこともありますので、伝えるつもりですけど」


「……そうですか。それでお願いします」


「わかりました。返事をお待ちしておりますので」


郡司さんを会社の入り口まで見送った。

ここの仕事を続けたい。

北野さんや高清水さんから指導は入るけれど、だいぶ仕事にも慣れた。

実のところを言えば、政義さんの会社の仕事も面白くなってきたところだ。

もし社員になったら、別の責任ある仕事をいただける可能性だってある。

政義さん抜きで仕事はできるわけはないから、必然的に私は政義さんのものになってしまうんだろうか。

それは避けたい。

あくまで仕事上のパートナーとして付き合っていきたいけれど、政義さんがそれを許してくれるんだろうか。

わかっているはずなのに、即答できなかった自分が情けなかった。
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