恋愛優遇は穏便に
政宗さんは驚くそぶりも見せず、ただ運転していた。

赤信号になり、ようやく車を停車する。

政宗さんは私を凝視した。

威圧的な視線に耐え切れず、下を向いた。


「いつですか、それは」


「お兄さんが帰ってきた日です。寝ぼけてて、政宗さんかと思って、つい」


「つい、ですか?」


「本当です。まさかお兄さんだなんて。いうつもりできたのに、ずるずるとここまで来てしまって」


「そうですか。わかりました」


青になり、車を発進させる。

この道は確かお兄さんと食事をしたお店が並ぶ道だった。

観光客も多いので、ホテルが多く建てられている。


「このまま帰したくはないですね。そんな告白されては」


「えっ」


どきん、とした。

もしかしたら、やり直せることができるのか。

でも、この状況の中では甘い考えなのは承知なのだが。

政宗さんが私の驚きの反応に対して、軽くあざ笑う。


「そうですね。上司と部下で寝るってどうですか? 仕事のために」


「何いってるんですか」


「そうしたいんじゃないんですか。そういう立場として接したほうがいいんじゃないんですか。むつみさんは」


政宗さんは冷静に言葉を返す。

そんなことしたいとは思ってない。

ただ単純に政宗さんが好きなだけなのに。


「そういう立場って。確かに社員と派遣社員の中ですけど、でも、私は」


「さて、もうすぐ自宅に着きますよ」


私の答えを遮るように、政宗さんが強めな口調で言う。


「いつになったら答えを言えますか」


「時間をつくりますよ」


私の自宅マンションの前に車を横付けしてくれた。


「そうですね。クリスマスの日にしましょうか」


クリスマスの日、か。


「わかりました。今日は送ってくださってありがとうございました」


「また連絡しますから」


そういって、政宗さんは車を走らせていった。
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