愛と哀






生きてるのか。
死んでるのか。
見ただけじゃわからない。


階段を降りて生死を確認したいけど、首輪のせいで行けない。






「あの女、多分さ……本気で好きだったんだろうね。七乃の父親の事が」


「……」


「だから今でも、事故死したあの人の面影を求め続けてるんだよ。そして……あの人の血を引いてながらも、ちっともあの人に似てない俺を愛せないんだろうね」



力が抜けたみたいに、その場に座り込んだ。

足に力が入らない。


立てない。

動けない。




「ま、俺だって愛情をくれない母親なんか大嫌いだけどね。でも七乃の事は大好き」



< 195 / 283 >

この作品をシェア

pagetop