初恋も二度目なら
その週の金曜日、営業部の歓迎会が行われた。

「この居酒屋は、俺ら営業部の行きつけなんだ」
「飲み物も種類が多いし、食べ物も充実してるよね」
「うん。いくつかは店長のサービス」
「そうなんだー。贔屓にしてるからだね」

私は、芥川さんと一緒に営業の人たちに一度だけお酌をした後、川端くんとおしゃべりしながら時々食べていた。
川端くんは、私より2つ上の34歳だけど、同期ということもあって、「くん」づけで呼んでいる。
というか、「“さん”より“くん”の方がいい」って、入社したときに川端くんから言われたのよね。

川端くんは、気配り上手で、とても優しい人だと思う。
今年のバレンタインデーには、「試作品だけど食べれるから」と言って、今度発売される予定のチョコをくれたし。

「・・・だからさー、たまには飲みに行こう。ここじゃなくてもいいし」
「あ、うん。そうだね」
「いつにする?」
「えっ?えっと・・・」

まさか、今ここで飲みに行く日を決めるとは思ってなかった私は、まごつきながら「火曜と木曜はジムで、金曜は習い事をするから・・あ、でもジムの日は他の曜日でも大丈夫」と言った。

「へぇ。卜部ちゃん、ジム通ってんのか」
「うん」

川端くんは、私のことを、仕事時は卜部「さん」と呼ぶけど、社内でも仕事じゃない話をする時は卜部「ちゃん」と呼ぶことがある。

「加圧トレーニングしてるの」
「あぁそれで・・・。卜部ちゃん、やっぱ痩せた?」
「え?あ・・・・・・分かる?」
「うん。最初は何となくだったが、間近で見て確信した。トレーニング中もメガネかけてんの?」
「ううん。コンタクトつけてるよ」
「ふーん」と川端くんは言いながら、私の上半身から顔をじーーっと見ている。

なんか・・・長峰部長の視線とはまた違うんだけど、落ち着かないのは、男の人に見られてるからかな。
それとも、私の気のせい?
ウーロンハイを1杯飲んだから、ちょっと酔って・・・。

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