初恋も二度目なら
「どうした・・・」
「シーッ。あ、でもここじゃあ大丈夫か」
「ねえ川端くん。どうしたの?」
「その・・さっき、長峰部長にそっくりな人が歩いてるのを見たような気がしてさ。つい」
「え!?ぶ、部長が・・・?」

なぜか川端くんと私は、顔を見合わせた。
その顔は、お互い「やばい」と言ってるような気が・・・しないでもない。

でも一体何が「やばい」のか・・・自分でも分からないんですけど。

「いやでも!部長って確信したわけじゃないし。もうどこにいるのか、俺分かんねーし・・・」
「ちょっと待って。部長って、確か近所の公園で朝ジョギングしてるって言ってた・・・でももう朝じゃないし。でも、もしかしたら、この公園の近くのマンションに住んでるのかしら・・・」
「ふーん。卜部ちゃん、部長のこと、何気に知ってるな」
「え?そんなことないよ」

だって私、部長の好きな食べ物とか、好きな色とか、趣味とか特技とか、そういうこと・・・いまだに知らない。
20年前に亡くなったお兄さんがいたことだって、つい最近知ったのに。

おつき合いしていた時じゃなくて。

私は、川端くんに弱弱しい笑みを向けると、もう一度「そんなことないよ」と言った。

「卜部ちゃん・・・」
「あの。そろそろ帰りましょうか」
「・・・そうだな」

・・・やだ。なんで私、泣きそうになってるんだろう。
と思いながら、私はひとりトボトボと、誰も待っていないマンションへ帰っていった。

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