クリアスカイ

「相変わらずだな、アツシは。」
「あー、ホントに。てか、お前もな。」
須藤の抑揚の少ない淡々とした口調は高校の頃と変わっていない。
あの頃アツシのマシンガントークに疲れた時は須藤と一緒にいるのが一番落ち着いた。
須藤は決して気取った奴ではないが、余計な発言はしないし冷静沈着なタイプだ。周りからは「何を考えているかわからない」とよく言われていたが、修二にとっては相手のテリトリーに踏み込む事をしない須藤の付き合い方が気にいっていた。
「で、どうする？金曜。」
修二が話を戻した。
「あぁ。別にいいけど。嫁さんも仕事だし。」
『嫁さん』という発言に修二は「やっぱ結婚したのかよ」と言った。
須藤はサラリと
「去年ね。」

修二はアツシの悔しがる顔を思い出して思わず笑いが漏れた。
「何で笑ってんだよ。」
不思議そうな須藤の声に
「いや、お前アツシに会ったら因縁つけられてもスルーしとけ。」
と言った。
「は？意味わかんねーし。」
「ははっ。会えばわかるって。」
修二は立ち上がり、マンションのエントランスをくぐった。
「んじゃあ、とりあえず金曜な。」
「了解。じゃあな。」

修二は携帯を閉じてエレベーターに乗り込んだ。
これで四人が揃うことが確定した。
アツシに話をもちかけられた時は正直面倒だとどこかで思っていた。
だが浅井にも背中を押され先程須藤と久しぶりに話した事で、すっかり金曜が待ちどおしく感じている自分にきづいた。
あの頃学校という狭い空間が自分達の全てだった。
3年ぶりの金曜は酒を片手に近況を語り合うといったところか。
連絡も途絶えた頃はこんな日がくるとは予想もしていなかった。


いつもは鬱陶しいだけの夜の暑さも今日はたいして気にならなかった。