クリアスカイ
須藤はどことなく哀しそうな目で笑っていた。
修二はあまりに突然の話で頭の中を整理するのに必死だった。いつか聞いた一番大変だった頃とはこの事だったのかとようやく理解していた。
吸いかけの煙草は灰皿におかれたまま、煙をたちのぼらせている。
「…でも、子供って…。」
修二は無意識に声にだした。須藤の話が去年の事ならばその子はとっくに誕生しているはずではないか。
しかし再会してから今日まで、須藤の言動からは一切そんな空気は感じなかった。
須藤は組んだ両手を額にあててうつむいた。
「流産したよ。」
修二は何も言えずにいた。須藤の声はハッキリ聞こえたが言葉がでてこなかった。須藤はたちつくしている修二の側まで来ると、灰皿の中で短くなってしまっていた煙草を消した。
「吸わないならつけんなよ。もったいない。」
その言葉で修二はハッと我に返った。目の前にいる須藤と目があったが、修二は思わず視線をさまよわせた。須藤は困ったように微笑した。
「そんな反応すんなよ。…って、悪いのは俺だよな。」
「そんな事…ねーよ。けど、何て言っていいかわかんねぇ……。」
修二はやっとそれだけを言った。須藤は首をふった。「勝手に話した俺が悪い。ごめん。」
修二は深呼吸した。そばに置いたままになっていたビールを一気に流し込み気持ちを整えた。
流産の理由は母体に負担がかかりすぎた為だったという。親を説得しに行ったり、半ば追い出される形で新居への引っ越しをしたりと随分無理をしてしまったらしく、突然の出血によって子供はいなくなってしまった。
「アイツの大丈夫なんて言葉、真にうけてた俺も馬鹿だったんだよな。」
須藤はポツリと呟いた。
修二は何とも言えない思いに駆られていた。再会した日にみんなで須藤の結婚を祝って乾杯した時、どんな気持ちだったか。知らなかったとはいえ、無性に自分に腹がたった。
修二はあまりに突然の話で頭の中を整理するのに必死だった。いつか聞いた一番大変だった頃とはこの事だったのかとようやく理解していた。
吸いかけの煙草は灰皿におかれたまま、煙をたちのぼらせている。
「…でも、子供って…。」
修二は無意識に声にだした。須藤の話が去年の事ならばその子はとっくに誕生しているはずではないか。
しかし再会してから今日まで、須藤の言動からは一切そんな空気は感じなかった。
須藤は組んだ両手を額にあててうつむいた。
「流産したよ。」
修二は何も言えずにいた。須藤の声はハッキリ聞こえたが言葉がでてこなかった。須藤はたちつくしている修二の側まで来ると、灰皿の中で短くなってしまっていた煙草を消した。
「吸わないならつけんなよ。もったいない。」
その言葉で修二はハッと我に返った。目の前にいる須藤と目があったが、修二は思わず視線をさまよわせた。須藤は困ったように微笑した。
「そんな反応すんなよ。…って、悪いのは俺だよな。」
「そんな事…ねーよ。けど、何て言っていいかわかんねぇ……。」
修二はやっとそれだけを言った。須藤は首をふった。「勝手に話した俺が悪い。ごめん。」
修二は深呼吸した。そばに置いたままになっていたビールを一気に流し込み気持ちを整えた。
流産の理由は母体に負担がかかりすぎた為だったという。親を説得しに行ったり、半ば追い出される形で新居への引っ越しをしたりと随分無理をしてしまったらしく、突然の出血によって子供はいなくなってしまった。
「アイツの大丈夫なんて言葉、真にうけてた俺も馬鹿だったんだよな。」
須藤はポツリと呟いた。
修二は何とも言えない思いに駆られていた。再会した日にみんなで須藤の結婚を祝って乾杯した時、どんな気持ちだったか。知らなかったとはいえ、無性に自分に腹がたった。