彼と僕らの1年間
冬野 英汰
雪が降る冬が過ぎた。校庭には沢山の桜の花が満開に咲いており、眺めているとつい寝てしまいそうになる。
うとうとしかけたとき教室にノック音がした。
「どうぞ」
ノック音に返事をすると、教室のドアがゆっくりと開き
「こ、こんにちわ...」
と、小さな女の子がこそりと顔を覗かせ入ってきた。
俺はその子に近づき女の子と同じ高さまでしゃがみ
「こんにちは、よく来たね」
と、話しかけると女の子はにっこりと笑った。その笑顔はとても可愛らしく思わず微笑んでしまった。
「お名前を教えてもらってもいいかな?」
そう言うと女の子は
「河上 愛綾」
と、とても小さな声で答えた。教室に二人きりという状況もあってかまだ少し緊張しているようだ。
「河上 愛綾ちゃんかぁ..いい名前だね」
そう言うと女の子は照れ笑いをした。それもまた愛らしかった。
「よく一人で来れたね、外に怖い人達いっぱいいたでしょ?」
そう聞いた瞬間女の子の顔がこわばった。
「大丈夫だよ。ここには怖い人達は入ってこれないし俺は違うから」
と、笑顔でそう言った。
女の子は少し警戒していたが窓越しに廊下を見たり、安全を確認すると表情を緩ませた。
「ところで今日はどんな要件で来たのかな?」
俺は本題に入るとまた女の子の表情が変わった。今にも泣きそうな顔で、
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