ハニー*トラブル~君の彼氏はつらいよ~
黙々とポテトサラダを食べる俺を不安そうに見つめて、感想を待つ瞳が可愛らしい
「うますぎるっ! なにこのポテトサラダ、やばい!」
「ほ、ほんと?」
「うん、まじ! 今まで食べた料理の中で一番うまいかも。もしかして、城ヶ崎さんって天才?」
大袈裟だよ、なんて城ヶ崎さんは笑っていたけれど、俺は結構真面目に思っていた。
うちの母親は料理が壊滅的で、姉ちゃんもその血を受け継いでいるのか、わけのわからないものを作り出すし。これ食い物じゃねぇってやつとかな。
唯一料理が作れるのは、俺と父親だけだ。あくまで、料理が“作れる”だけだぞ。“できる”わけじゃない!
弁当はいつも父親が作っていて、
朝昼晩の飯は俺担当だ。
ひどくね?
俺のほうが絶対に料理作ってるのに、毎朝弁当渡されるとき「朝陽が作ってくれれば父さん楽なんだけどなー」とか言われるんだぞ。どんな仕打ちだよ。
「あの、松本くん」
弁当を食い終わって、片付けをしているとき、城ヶ崎さんが遠慮がちに口を開いた。
くりくりした大きな目がキョロキョロ動いて、真っ赤になっていく白い頬。
ん? どうしたんだ!?
熱でも出たんじゃないかって心配していると、次の瞬間、その言葉の続きが聞けた。
「美咲って、呼んで欲しい、な……」
俺も、一応それなりに経験は、ちょびっとくらいあるわけで。それに、姉ちゃんだっているし。
だから、女の子にときめくことはあまりないけど、そのはにかんだような笑顔を見たら、ガラにもなく胸がキュンとしてしまった。
「……あ、う、うん。おっけおっけ」
どもってしまったのも致し方ないと思ってくれ。
「わたしも、朝陽くんって、呼んでもいいかな?」
照れ臭そうに髪の毛をくるくるといじる白くて細い指。
ダメなわけがなくて、言葉のかわりに、首を何度も縦に振った。
◇
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