ハニー*トラブル~君の彼氏はつらいよ~


 ◇
 ◆



初めてだ。


俺にあんな顔して、朝陽くんって呼んでもいい?なんて聞いてきた子。



俺、別にモテるキャラでもないし。


かっこよくもないし。


そんなこと言われなくても、大体の女子には呼び捨てされてるくらい底辺(自分で言ってて悲しい……)の男なのに


「おい朝陽ーどけよー、あたしが通れないぞー。ゴミは端に避けてろ」


……ほらな。


こういう扱いだぞ、俺。


昼休みが終わって、おとなしく教室に戻ったばかりの俺に、不機嫌そうな女の声がかかった。

しかも、ゴミって。
俺ゴミって言われたぞ。


「あー、うん。ごめんなさい」

「つーかあんたまじで美咲ちゃんと付き合ってんのかよ。微妙顔のくせして」


微妙顔ってなんだ、微妙顔って


俺の扱い雑すぎないですか!



俺を“微妙顔”と称するこいつは、小学校からの幼なじみというやつで、同じクラスの辻岡結子(つじおかゆいこ)

俺は、ツジって呼んでる。


ちなみに、ツジは啓太に片恋中だ。啓太はツジのことなんとも思ってないみたいだけど。

だってあいつロリコ……じゃなくて、えーと、年下好きだしな。


「微妙顔ってなんだ、微妙顔って」

「そのまんまの意味よ、バカなのあんた」


ほらな? こいつひどくない?


日頃の俺の扱いこんなもんだからね!!他の女子からも同じ扱いされてますからね!



だから、城ヶ崎さん、じゃなくて、美咲……ちゃん。

うん、だめだ。呼び慣れない。あきらめて城ヶ崎さんって呼ぼうかな


じゃ、なくて。

城ヶ崎、さんみたいな、あんな態度とられると、逆に戸惑うんだ。



あんな扱い、されたことねぇもん。

されたとしたらあの家庭教師だったリサさんくらい。

いや、リサさんはあんなに純粋じゃない。もっと肉食獣っぽい人だった。


なんか、こう、……ライオンっぽい感じ。いや、ハイエナだな。


「あんま朝陽のこといじめんなよー、結子ー」


ドンッとすさまじい勢いで俺に体当たりしてきたのは、確認するまでもなく啓太だ。絶対にそうだ。俺にはわかる。



< 21 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop