残業しないで帰りなさい!
「でもさ、なんで青山さんじゃないとダメだったのー?」
白石さんに聞かれて、トントンッと伝票を揃えながら私は首を傾げた。
「なんか、よくわかんないんですよね、普通にお茶を出してきただけなんですけど。片付けもやれって言われて……」
「ええっ!片付けもですか?それはさすがに私が行きますよ」
沢口さんはまたそう言ってくれたけど、久保田係長の怒った顔を思い出して首を振った。
「いえ、大丈夫ですよ。今度は最初から私が行ってきます。片付けなんて、すぐに終わりますから」
そう言ってにっこり笑って見せた。
それから黙々と作業をして、ちょうど伝票整理も終わり、みんなでお茶を飲んで一息ついていた時、高野係長がまた声をかけてきた。
「青山さーん、久保田係長がお呼びだよ」
「はあっ……」
ため息をついて立ち上がった。気が重いなあ。
「ちょっと高野係長!ずいぶんあの人には弱くないですかー?言いなりじゃないですか!」
白石さんが食ってかかった。
「久保田係長、俺の先輩だからさ。怖いし、頭が上がらなくってね」
「情けないっ!」
「誰かあの人のこと、押さえられる人はいないんですか?」
沢口さんまでプリプリしながら会話に入って来た。
高野係長はうーんと腕組みをした。
「そうだな、強いて言えば藤崎課長くらいじゃない?元カレだし」
課長の名前を聞いただけでちょっとドキッとしたのに……。
……元カレって?