残業しないで帰りなさい!
もう一度深呼吸をして、頬を両手で挟んでグニグニほぐして笑顔を作ってから、書庫に戻って伝票整理の作業に合流した。
「青山さん、大丈夫ですか?なんか顔色悪くありません?」
あれ……。
気付かれないように笑顔で戻ったつもりだったのに。
沢口さんは私の異変に気がついて、心配そうに聞いてきた。
沢口さん、さすがだなあ。
「いえ、大丈夫です。ただ、ちょっと気持ち悪いオジサンがいたから、びっくりしちゃって」
「なになにー?気持ち悪いオジサンって?」
白石さんは興味津々な様子で聞いてきた。
「えっと、なんて言うのか、品定めするような目で見てくる感じがすごい気持ち悪くて……」
白石さんと沢口さんには『出るとこ出てるし』なんて言われたことはとても言えなかった。
そもそも私、別に出るとこ出てないし。胸だってそんなに大きくないって言うか、むしろ小さいし。
なんであんなこと言われなきゃいけなかったのかな……。
やっぱりすごく不快だなあ。
「あー、そういうの、嫌ですよね!」
「ホントー!きもーい」
そんなことを話していたら、三人とも同じような苦々しい顔になったのがおかしくて、顔を見合わせて笑ってしまった。