残業しないで帰りなさい!

無言のまま放心状態でその場を離れると、とりあえず4階に向かった。

4階でエレベーターを降り、フラフラと給湯室に向かっていたら、いきなり腕を掴まれた。
驚いて振り返ると、腕を掴んでいるのは久保田係長だった。

掴まれた腕に強い不快感を感じる。

今、一番話したくない人……。

「ちょっと来て!」

そのまま勢いよくトイレに引きずり込まれた。

「……なんでしょうか?」

心が弱っているせいか小さな声しか出てこない。

「向こうの重役の方が、今日の夜、アンタと一緒に食事に行きたいっておっしゃってるから、行ってきなさい」

「えっ……?」

あんな気持ち悪いことを言ったオジサンたちと一緒に食事?
怖い!
ヤダ……、そんなの絶対行きたくない。

「そんなの……無理です」

フルフルと首を振ると、久保田係長は腕を掴む手に力を入れた。

「ハアッ?なんで?美味しいもの食べられるわよ?何も問題ないでしょ」

問題だらけです。美味しいものなんて、いらない。

「すみません……」

「アンタがうまくやってくれれば商談もうまくいくんだから」

商談ってそんな感じなんですか?なんかちょっと、おかしくないですか?

これって、久保田係長は私に接待をしろって言っているのかな?

つまり、あのオジサンたちに対して、女の子として一緒に食事をする接待をしろってこと?
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