残業しないで帰りなさい!
翌朝出勤したら、昨日まとめておいた資料を手に高野係長が近付いてきた。
実は、私は係長が付けているシトラス系のコロンの匂いが苦手だ。できることなら、あんまり近付かないでほしいんだけどな。
「昨日はデータ、まとめてくれてありがとね。遅くまでかかっちゃった?」
「あ、えっと。すみません……、実は9時までかかってしまって」
「えっ!そうだったの?そんなに無理しなくても良かったのに」
「すみません。でも、今回で要領は掴めたので次からは遅くならないように頑張ります!」
「そお?なんか、悪かったね」
「いえ」
少しじっと考えてから係長は私を見た。
「その時間だと……人事課の見回りなんて会ったりした?」
「はい、お会いしました」
「マジ?んー、そりゃまずいなー」
え?まずいの?人事課長に会ったことが?
「……まずかった、ですか?人事の藤崎課長って、なんかちょっとやる気なさそーな感じの方ですよね?」
「いやいや、そう見せてるだけだよ。あの人、ナタの切れ味なんだから」
「鉈の切れ味??」
切れ味鋭いってこと?意味がわからなくて首を傾げていると高野係長は笑った。
「あはは、ごめんごめん。青山さん、競馬のことなんてわかんないもんね?まあ、できる人って意味だよ」
競馬!?全くわからない。なんのこっちゃ。
「はあ……、そうですか」
できる人って意味なんだ……。でも、眠そうで優しそうで、仕事ができそうな感じはしなかったけどなあ。
でも、仕事ができなかったら課長になんてなれないか。