残業しないで帰りなさい!

人事課って社員の勤怠管理をしているだけかと思ってたけど、見回りもしているなんて、ちょっと意外。

うちの会社って見回りなんかするくらい残業削減に力を入れてるんだ。

それにしても……。

ブラウスのボタンをはずしながら、何か違和感を感じていた。

なんだろうな、この違和感。いつもと何かが違うような気がするんだけど。
遅い時間だからかな?こんな時間にここで着替えたこと、ないもんね?

急いで着替えて更衣室を出ると、藤崎課長が壁に寄りかかって腕組みをして立っていた。

「あれ?」

「着替え終わった?」

「はあ」

「じゃ、帰んなさい」

「……何してるんですか?」

「待ってたの。こんな時間に一人で着替えてたら、危ないでしょ」

「そう、でしょうか?」

会社のビルの中なのに、危ないことなんてないと思うけど。子どもじゃないんだし。

首を傾げながらそんなことを思っていたら、ちょうどエレベーターが来たから、もう一度ペコリと頭を下げると、藤崎課長は眠そうな笑顔でひらひらと手を振った。

「気をつけてねー」

「はーい」

間延びした言い方をされて、つい私も間延びした返事をしてしまった。

藤崎課長、フレンドリーに手なんか振って、よくわからない人。

あ。
……そっか。

感じていた違和感の原因、ちょっとわかったかも。

私、人から見下ろされることも見上げることも滅多にないのに、藤崎課長は私よりも背が高くて、ずっと見上げていたからかもしれない。
だから違和感なんて感じたのかも。

そういうことだな、うん。
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