残業しないで帰りなさい!

今日はそんなに遅くならないで帰れそう。

そう思って伝票に手をかけた時。

「何してんの?」

ハッとして固まった。

声を聞いただけですぐに課長だってわかったけれど、なんかいつもの声と違う。振り返るのがちょっと怖かった。

恐る恐る振り返ると、課長はいつもと違って無表情に私を見下ろしていた。ちょっと怖い……。でも、無表情でも王子様だなあ、なんて思う私はバカなんだと思う。

「何してんのか聞いてるんだけど」

やっぱり無表情のまま。それに、いつもより低い声。なんか、怒ってる……?
これって見回りなの?回ってくる時間、早くないですか?

「あの、えっと、今日締め日なので、伝票処理を終わらせないと……」

「そんなの明日やって!経理には俺から言っておくから」

あれ?こんなに強い言い方するんだ……。残業してるから怒ってるのかな?でも、みんな残ってるし、時間もそんなに遅くないのに。

「あの……、あと5枚で終わりなので、終わらせて帰ってもいいですか?」
「却下」

課長は被せるように言ってきた。

「で、でもっ」

「君は昨日倒れて怪我したんだよ?そんな人が翌日には残業だなんてありえないから。今すぐ帰りなさい!」

いつもより少し言い方は強いけど、心配してくれてるのかな?でも、なんか強引だなあ。あと5枚なんてすぐ終わるのに。
そう思って、つい不満を漏らしてしまった。
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