残業しないで帰りなさい!
課長は少し目をそらした。
「軽蔑するかな?好きでもない人と付き合うなんて」
「……軽蔑はしませんが、好きでもないなら、……どうして久保田係長に復縁を迫ったんですか?」
課長はムスッとした。
「だから、復縁なんて迫ってません!君さあ、俺の話、聞いてたの?」
「聞いてましたけど……」
「ホントに?」
だって、迫ってたじゃないですか!
……それとも、王子様ならあのくらい迫るのは普通?
「課長なら……きっと、よくあるんですよね?あんな風に、女性に……迫ること」
「なにそれ?そんなわけないじゃない。それ、どんなイメージよ?だいたい俺、久保田さんに迫ってなんかいないし。君は壁ドンって言うけど、この状態よりずっと遠かったんだよ?」
この状態より遠くても、私はきっとドキドキする。でも、課長にとってはこのくらい、たいしたことないの?
「でも、すごく一生懸命だったから……」
「好きでもないのに、迫るわけがないでしょ?……君、もしかして、人の話を聞かない子なのかなあ」
え?
そんなこと、ないもん。
「ちゃんと聞いてます!」
「いや、聞いてないね!」
「聞いてます」
「聞いてません」
私たち、また押し問答してる……。
「……」
私が困って黙ったら、課長は少し考えてから微笑んで、私を覗き込んだ。その近さにドキドキしてうつむく。
「じゃあ、思い込みが激しいのかな?」
んー……、それはあるかもしれない。よく言われるし、自分でもそう思う。
でも、認めるのはちょっと悔しくて目をそらした。
「……それは、ないとは言い切れませんけど」
「ふーん、なるほどねえ」
ふと見上げると、課長が初めて見せる表情をしたから、思わずじっと凝視してしまった。
ちょっと悪そうに微笑んでる。
……悪そう?いや、意地悪な、顔?