残業しないで帰りなさい!
課長が少し腕を屈めたから、影が迫ってきたように感じた。
あの……なんだかすごくドキドキするんですけど……。
「君は俺が久保田さんに壁ドンしたのを見て、俺たちがよりを戻したって思ったんだ?」
「……はい」
少し口を尖らせてうなずく。
「俺が彼女のことを今でも好きだと思ったんだ?」
「はい……」
だから、さっきそう言ったじゃないですか!
こんなに近寄って、そんなこと聞かないでください。
課長はニヤリと笑った。
さっきからその意地悪な顔は何なんですか?
「つまり、君は……」
「?」
「君は、やきもちを妬いたのかな?」
「え?」
言われてみて、ハッとした。
やきもち?
私、久保田係長にやきもちを妬いたの?……嫉妬した?羨ましかった?
……うん。そうだったのかもしれない。
課長の気持ちが久保田係長に向いてしまって、悲しかった。……羨ましかった。
もともと、課長の恋人だったなんて、もうそれだけで羨ましかったのかもしれない。
綺麗な人で、私はとても敵わないし。
私に無いものをたくさん持っていて、妬んだのかもしれない。
妬むなんて……。なんか、自己嫌悪。
「君は俺の気持ちが久保田さんに戻っちゃったと思って泣いたの?」
「!」
思わず目を大きく開いて息を飲んだ。
泣いたの、バレてたんだ!
私の考えも完全にバレてる……。
「俺は覚悟を決めて一世一代の告白をしたのになあ。俺ってそんなに信用ない?」
「……」
一世一代の告白……。
確かにすごく誠実だったけど。
信用してないわけじゃないけど、だって壁ドンなんかしてたんだもん。