残業しないで帰りなさい!
俺を見てるわけじゃないって何?
「誰を見てるの?」
「着ぐるみ」
「え?」
着ぐるみ?
ますますわけがわからない。
着ぐるみって、ゆるキャラとかそういうのだよね?翔太くんはある意味、のんびりしたゆるキャラだけど。
「こんなの、着ぐるみみたいなもんじゃない?着ぐるみの中に入ってる俺がどんな人間かなんて、わかんないんだからさ。だから気にしないし、本気になんてならない」
つまり?
翔太くんの体が着ぐるみってこと?カッコイイ王子様の着ぐるみを着ているの?
もしかして……。
私が王子様って言った時、私の望む王子様になってあげようと思ったってそういうこと?
王子様の着ぐるみを着て、望みの王子様を演じてあげようって思ったの?
翔太くん、今までずっとそうしてたの?
本当の自分を出さずに、望まれた王子様を着ぐるみの中で一人演じてきたの?
瞬間的に途方もない寂しさを感じた。
翔太くんが抱える寂しさ。
誰も本当の自分なんて見てないって思ってる?
誰も本当の自分には興味がないって思ってる?
そんなことない!
私、あなたに興味がある。
私、王子様じゃないあなたを知ってる。
ヤキモチ妬きなことも、子どもみたいにはしゃぐことも、リップクリームをワイシャツに付けたままにする悪趣味なことも、ついうっかり「どっこいしょ」って言っちゃうことも、私いろいろ知ってる。
私はそんなあなたのことが好き。全部好き。
こんなに好きなのに、私はまだほんの少ししか翔太くんのことを知らない。
もっともっと、翔太くんのことが知りたい。
王子様じゃない翔太くんのことが、知りたい。
私はきっとどんなあなたも好きになる。