残業しないで帰りなさい!
勇気のいる行動……?確かに、素の姿を見せるっていうのは勇気がいることかもしれない。やっぱりよく見られたいから、普通はかっこつけたりするもんね?
翔太くんは勇気を出して私に素の姿を見せてくれているの?
私は翔太くんに素の姿を見せている?
……私は見せてると思う。
っていうか、隠せるほどのスキルがない。
隠そうとしても、ついつい普段の姿が出ちゃう。私はやっぱりお子ちゃまなのです。
「確かに、俺は香奈ちゃんよりずっと年上で、香奈ちゃんよりもいろんなことを知ってるよ?でもね、知れば知るほど狡猾にもなるし、臆病にもなっていく。失敗を怖れていつものやり方を選択して適当に対応したりしてね。知ってるやり方から外れるってのは怖いことなんだよ」
翔太くんはため息をついて頭に頬を寄せた。
「でも、俺は今までの常識を捨てて、一から君と恋を始めることにした。全てをリセットして最初からやり直すなんてかなりの気力が必要だし、オッサンにとって、それはもう大変なわけですよ」
頭の上の頬をくすぐったく感じながら、チラッと翔太くんを見上げた。
「翔太くんはオッサンじゃない」
「あはは、そう言ってもらえると思った」
翔太くんは私の頭を撫でた。
もうっ!ホントにわかってるのかなあ。
目を閉じたら寄りかかった肩から温かさが伝わってくる。
「……翔太くん、どうしてリセットしたの?」
別に今までのままで良かったんじゃないの?どうしてリセットして一からやり直す必要があったんだろう。