残業しないで帰りなさい!

夕方4時を過ぎた頃、営業の峰岸さんがバタバタと焦った様子でやって来た。峰岸さんは北見さんから引き継いだ営業さんの一人だ。

「青山さん、ごめーん!頼むのすっかり忘れてたんだけどさ、子ども向け学習セットの資料とサンプル、作ってもらっていいかな?」

「え?あ、はい」

「小学一年生向けね。明日イベントがあって、朝イチで持ってかなきゃいけないんだけど、俺また外に行かなきゃいけないんだ」

峰岸さん、もうちょっと早い時間に言ってくれれば良かったのにな。
でも、ごめんって言ってるし、仕方ないか。

「わかりました。何セット作ればいいですか?」

「300セット。悪いけど段ボールに入れて車の後ろに乗っけといて。車は3号ね」

300!?うーん、正直言って多いなあ。

「わかりました」

笑顔でそう答えたものの、気が重かった。これは間違いなく今日も残業になっちゃうよ。

また大塚係長が見回りかな……。眼鏡をスッと指で直した後に向けてくるあの刺さるような冷たい視線とキツーイお言葉を思い出すと背筋がゾッとした。

ああ……、イヤだなあ。あの人には会いたくない。

超速攻で頑張って、8時前に終わらせようか。……絶対無理だけど。

今日の見回り、藤崎課長だったらいいのに。それとも、単純作業で残業なんかしてたら藤崎課長も怒っちゃうのかな?

そもそも、見回りって毎日やっているのかな?毎日やってたら、あの人たちが毎日残業になっちゃうんじゃないの?

あ!だから大塚係長は不機嫌だったのかも。

まあ、大塚係長のことはどうでもいい。

とにかく、さっさとやっちゃおう!
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