残業しないで帰りなさい!
300セットか……。ここで広げたら大変だから、会議室でやろうかな。
高野係長にお願いして、会議室の鍵を開けてもらった。
倉庫からサンプルと資料を取り出してドシンッと台車に乗せ、ガラガラと会議室に運ぶ。セットを作りやすいようにサンプルを並べていたら扉を開ける音がして、白石さんがひょこっと顔を出した。
「定時まで手伝うよー」
「ありがとうございます」
「峰岸くん、もっと早く言ってくれればよかったのにね。自己責任なんだから『自分でやれ』って言ってやればよかったのに!」
「そんな、言えませんよ。それに、峰岸さんもごめんって言ってたし」
「何言ってんの!青山さんは甘い!」
「そうですかねぇ……」
私も白石さんみたいに言いたいことが言えたらいいけど。臆病だから無理なんだよなあ。
「白石さん、今日も合コンですか?」
「それがね、違うの!もお、聞いてよ!実は、この間合コンで会った人に誘われてさ、今日は初デートなのですっ!」
「おお!すごーい」
「あんだけ合コンに行ってんのに誘われたの初めてだよ!」
「え?そうなんですか」
「うん」
ニコニコ嬉しそうな白石さん。
っていうか、今まで誘われなかったの?こんなに可愛らしいのに。
「『ハッキリものを言う子が好き』なんだってさ、その人。タメだし話もけっこう合ったし、なかなかイケメンだったし、いいかなーと思って!」
「なるほど……」
そういうことか。きっと白石さんは合コンでも会社と同じように言いたいことをガンガン言っているに違いない。
男の人ってそういう女は苦手なんだろうな。