残業しないで帰りなさい!
藤崎課長は訝しげな顔をして首を傾げた。
「……俺ってまだそんなこと言われてるの?」
「い、いえっ!昔そう呼ばれてたらしいよって噂で聞いて。今はっ……」
今は、なんて口走ってしまったけど、今のあだ名もどうかと思うから言いづらくて口ごもってしまった。
「今は?」
聞かないでほしかったのに……。言いづらいけど、言うしかないですか?
「えっと、今は……『うたたね王子』ですよね?」
「あ、やっぱりそうなんだ。どっちもヤだけどねえ、『カミソリ』よりは『うたたね』の方がマシかなあ」
「はあ……」
「それにさ、『王子』って言われんの、すんごくイヤなんだよねえ」
「え?イヤなんですか?」
それはちょっと意外だな。だって、本当にすごく王子様っぽいもの。もっとも正しい形容だと思うけど。
「そりゃあイヤだよ。俺なんてただのオッサンだよ?それを『王子』なんてさ」
「そうですか?」
藤崎課長は全然オッサンには見えない。『カミソリ王子』なんて言われてた頃は、若くてもっと王子様感がすごかったんだろうな。
藤崎課長は明らかにわざとやる気のない顔をした。
「そもそも俺『王子』なんてガラじゃないし」
「ガラ、ですか?」
王子様にガラなんてあるのかな?