残業しないで帰りなさい!

すごくほのぼのとした雰囲気がくすぐったい。こんなの、いいのかな……?
なぜか罪悪感を感じて、逃げるように仕事の質問してみることにした。

「残業の見回りって毎日交代でしてるんですか?」

「ん?見回り?俺と大塚が交代でやってるけど、さすがに毎日はしていないよ」

「そうなんですか……」

それならどうして私が遅くまで残っている時に限って見回りに出くわしてしまうんだろう。運が悪いのかな。

「毎日やってたら、俺たち大変だよ」

「それは、そうですよね……。残業するなって言ってる人たちが一番残業することになっちゃいますもんね?」

「そうそう!」

そもそも、どうしてうちの会社は見回りしてまで残業をやめさせるんだろう。

「……根本的な質問で申し訳ないんですけど、どうして残業しちゃダメなんですか?」

「まあ、会社の方針もあるけど、社会情勢の影響かな?」

「社会情勢、ですか?」

藤崎課長はスプーンをじっと見た後、まっすぐに私を見た。

「うん。最近ブラック企業ってすごく話題っていうか問題視されてるじゃない?それで、厚生労働省が本格的にブラック企業の調査を始めたんだよ。まあ、基本的には賃金不払いとかそういう法令違反があるような企業が対象だけど、フリーダイヤルなんか作っちゃってるからさ。万が一うちの社員が『うちの会社はブラックです』なんてわけわかんないこと言い出したら、困るでしょ?」

「はあ」

そんなこと言うような社員、いるのかな?
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