残業しないで帰りなさい!
北見さんが産休に入ってしばらくしてから、横浜で開催される見本市の準備が始まって、急に忙しくなった。
私たち制服組、いわゆる一般職の女子社員は、男性社員や総合職の女性をサポートするのがほとんどで、今まではあまり遅くまで残業をすることはなかった。
でも、北見さんから引き継いだ仕事と見本市の準備が重なったらすごく忙しくなってしまい、このところ少しずつ帰る時間が遅くなってきている。
今日も高野係長にデータ整理を頼まれてしまった。
いつもにも増して遅くなってしまいそう……。
「残業させちゃって悪いんだけど、今日はどうしても行かなきゃいけないところがあってさ。ホント悪いっ!」
係長は拝むように手を合わせた。行かなきゃいけないとか言って、飲み会ですよね?
「大丈夫ですよ。ちゃんと終わらせますから」
エヘヘと笑ってそう言ったものの、本当はそんなのただの強がりで。
どのくらいの時間で作業を終えられるのかも全然わからなくて、確実に帰りが遅くなることを覚悟していた。
「頼んでおいてなんだけど、あんまり遅くまで残るなよ。最近うるさいからさ」
うるさい?
「何がうるさいんですか?」
「残業させるなって上がうるさいんだよ」
「そうなんですか?」
高野係長によると我が社は最近、残業の削減に取り組んでいて、各部署の残業チェックが厳しくなっているらしい。
そう言われてもなあ。最近忙しいからどうしても残業になっちゃうわけで。
それに今日は頼まれごとで残業するんだから、仕方ないよね。