残業しないで帰りなさい!

そんなこんなで定時に大急ぎで帰った係長と、うきうきと合コンに向かった白石さんを見送った後、一度深呼吸をして気合いを入れた。

頑張って早く終わらせちゃおう。

データをまとめる作業を頼まれたものの、実はこの作業をするのは初めてで、まだ今一つ要領が掴めていない。

ひたすら集中して資料と画面を見比べて、キーボードを打ち続ける。

先輩方が一人、また一人と退社していくたびに「お疲れさまでーす」と言って送り出し、気が付けば最後の一人になっていた。

寂しい。フロアが広く感じる……。
とにかく頑張ろう。

そのうちすっかり集中してしまって、時間の感覚は完全に麻痺していた。

何度も見直して、間違いがないか確認する。

うん!大丈夫!

やっと終わったぁー!
もう疲れたっ!

思いっきり伸びをしながらチラッと時計を見たら、もう9時になっていた。

えっ!やだ、もうこんな時間?

全然気が付かなかった。こんな時間まで残ってたの、初めてかも。
早く帰んなきゃ!

データを共有ファイルに保存して、印刷した資料を係長の机に置くと、急いでバッグを取り出して帰り支度を始めた。

コツッ。

えっ?
背後で足音!?
ギョッとして思わず体が固まる。

こ、怖い……。

こんな時間に誰だろう。……警備員さん?

「こんな時間まで一人で残業かー?」

「!」

ちょっと棒読みな男の人の声にビクッとした。警備員さんってこんな喋り方するのかな?

怖かったけど、恐る恐るゆっくり振り返った。
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