残業しないで帰りなさい!

私が怖じ気づいたことに気が付いたのか、瑞穂はまた子どもに言い聞かせるような顔をした。

「香奈?ここはひとつ勇気を振り絞って一歩を踏み出してごらん。王子はきっと待ってると思うよ。それに話って言ったって、そんなたいした話をするわけじゃないんだしさ。だから、がんばって!」

瑞穂はいい友達だなあ。

「うん……、がんばってみる。それでも、またもやもやしたら、私の話、聞いてくれる?」

「いいよ。その代わり、またここのパンケーキ奢って!」

「うん。……そういえばパンケーキ、すっごく美味しかったね」

「うん!美味しかったー!もやもやしてなくてもまた食べに来よー?」

二人でうんうんとうなずいて笑った。

瑞穂に話を聞いてもらえて、本当に良かった。一人では見えなかったことが見えるようになった気がする。

「ありがとね、瑞穂」

「いんや、いいんだよ。今までいつも聞いてもらってたのは私なんだし。アンタの恋バナなんて聞けて、ホント嬉しいよ」

瑞穂はニイッと笑った。

帰り道は瑞穂の彼がマメじゃないっていう愚痴を延々と聞きながら歩いた。
そういえば、課長も自分のこと、マメじゃないみたいなこと、言ってたなあ。

課長はマメじゃないのかな?
やっぱり、いろいろとお話ししたい。話してみないとわからないもの。

私、がんばれるかな……。

でも、私は課長にだけ女の子の姿に見えるんだって思ったら、女の子でいることが少し怖くないような気がした。
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