嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
「ちなみに、今の人って誰でしたっけ?前にお会いしたこと、ありましたっけ?」
「アイツ?阿部だよ?覚えてない?初めてシュルツさんのパーティーに呼ばれた時に挨拶しただろ?」
うーん……、覚えてない。
「すみません、覚えてませんでした」
「いや、いいんだ」
隼人さんはまた、まんざらでもない顔をした。他の男の人を覚えていなかったことが嬉しかったの?
私は隼人さんのことしか見てないのに。やきもちを妬く必要なんて、全然ないのに。
本当に困った人です。
「アイツはね、ふざけた奴だけど、仕事はやる方なんだ」
「そうなんですか?」
隼人さんが実力を認めるなんて、ああ見えてすごい人なのかな?だからあんな若いのに、ドイツに赴任なんてしてるのかもね。
上司に対してあんな態度が許されるのは、仕事でキチンと成果を出してるから?
「ただ、あの態度は叩き直さないとな」
うんうん、そうだね。
「アイツ、人のものだろうと奪おうと思ったらかなり強引にくるらしいから、気を付けろよ。そういう噂が絶えなくて困ってるんだ」
えっ?叩き直すってそういうこと?
「私も気を付けますけど、隼人さんも守ってくださいね?」
「そりゃ、もちろん。俺は雪菜の番犬だから」
隼人さん、阿部さんに言われたことを気にしてるの?隼人さんはイヌ科というよりネコ科っぽいけど。それも黒豹とかしなやかでかっこいい生き物!
たとえネコ科であっても、こんなに頼もしい番猫がいるのなら、私はとても安心なのです。
私もちょっと調子に乗って猫気分でゴロゴロと甘えてみたら、隼人さんは今度は照れたような顔をした。
んー!照れてる!なんか、嬉しい!
嬉しくて私が見上げると、隼人さんは困ったように微笑んだ。