嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

 ちょっと調子に乗りすぎた?あんまり人前でベタベタしたらいけなかったかな?

 不安になって少し離れたら、隼人さんは不機嫌そうな顔をして、私の不安とは全然違うことを言い始めた。

「阿部のヤツ、雪菜のことをわかってるようなこと言って、なんか腹立つ」

「ん?えっと……」

 それは阿部さんが私のこと、何も言えないタイプだって思っていたこと?

 確か、前に阿部さんと会ったのはドイツに来たばかりの頃だった。あの頃の私はまだ自分に自信がなくて、ハッキリ言うとかできなかったと思う。

 でも、あれから私は変わった。もちろんドイツの生活に慣れたというのもあるけれど、それだけじゃなくて、自分に自信を持っていいって思えるようになって、変に遠慮しなくなった。

 阿部さんはそんな私の変化に気が付いた。きっと観察力がある人なんだね?

 いろんな噂のある人なら、私だけじゃなくてきっと他の女の人のこともじっくり観察してるんじゃないの?

 阿部さんが、私のことを何も言えないタイプだと思って、ターゲットにしようと手を握ったのなら、そうじゃないってわかったわけだし、もう大丈夫なんじゃないのかな。

「気にすることなんてありません」

「えっ?」

「私には何があっても隼人さんだけですから。他の男の人がどう思おうと、隼人さんは気にする必要なんて全然ないんです」

「……うん……そうだね」

 そうだよ?隼人さんのやきもちはすごくすごく嬉しいけど、どんなことがあっても、私はあなたのそばにいる。だから大丈夫。

 目を閉じたら、隼人さんは私をそっと軽く後ろから抱き締めて、耳元で「早く帰りたい」と囁いた。

 それだけでも驚いて、ドキドキしてキュンとするのに、隼人さんは囁くついでにパクッとやんわり耳を噛んだ。

 いきなりの感触に首筋がゾクッとして、小さく体が跳ねる。

 そんなことっ!

 誰か見てるかもしれないと思ったけど、周りを見る勇気もなくて、困って赤くなってじっと固まった。

「……感じちゃった?」

 またそういう意地悪なことを言う!

 ……ホントはちょっとゾクッとしちゃったけど。頬を赤くしてうつむくことしかできない。

「いいな、その反応。可愛いな」

 妻の頬を染めて喜ぶ夫……。うーん、まあ、私たち夫婦は仲良しってことなのかな?
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