嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
「子どもが出来て雪菜が太ったとしても、俺は全然かまわないよ。ただね、子どもが出来たら当然俺たちの関係にも変化があると思うんだ。その時お互いの距離が離れてしまうんじゃないかって、怖いんだよ」
あ……、そういうこと?
……私って本当に大バカ。隼人さんが大爆笑したのもうなずける。
「きっと子どもの世話って大変なんだろうし、雪菜が子どもばっかりになって、俺を見てくれなくなったら、俺はガキだからきっとつまらないって思ってしまうと思う。親なんだから当たり前って言われてしまえばそれまでだけど、そこんところ、俺は覚悟が足りないんだ」
確かに子どもを育てるのは大変なのかもしれない。でも、だからって隼人さんから気持ちが離れたりはしないよ?
「えっと、もし子どもが出来て、私が子どものことで大変になって、物理的に隼人さんを見つめることが減ったとしても、心の中ではいつも隼人さんを見ていると私は思うのです」
隼人さんはフッと笑った。
「……そう言ってもらえるのは嬉しいけどね。まあ、俺なんて単純だからさ、雪菜が好き好き大好きって言ってくれれば、それだけで騙されちゃうよ、きっと」
私、騙してなんかいないのに!隼人さん、私の言葉を信じてくれていないの?
「私が大好きって言ったら、それは騙しているのではなくて、本当のことです」
「あはは、うん……。そうだよね?じゃあさ、こうしようか?子どもが出来て産まれてからもお互いにちゃんと好きって言うこと!どう?」
隼人さん、約束しないと不安?
でも、その立場に立ってみないとわからないけど、すごく忙しかったら、ついつい言葉で伝えることを疎かにしてしまうのかもしれない。隼人さんはそうやって私たちの距離が離れてしまうことを怖れているの?
「もちろん言いますよ?その代わり、隼人さんもちゃんと好きって言ってくださいね?」
「もちろん!じゃあ、約束して?」
隼人さんが小指を差し出したから、私も小指を絡めた。
「破ったら針千本だよ?」
「隼人さんだって、針千本ですからね?」
「俺は破るわけがないから」
「私だって破りません。隼人さんのこと、大好きですから」
「俺だって雪菜のこと、大好きだよ」
指を絡めたまま二人で顔を見合わせて微笑んだ。この瞬間も幸せ。