嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
隼人さんはふと、テーブルの上に飾ってあったウサギの置物を手に取った。
「気休めだけどさ、ちょうどイースターだし、イースターバニーに願ってみたら?」
「イースターバニー?」
「うん。ノウサギって多産だからイースターの象徴なんだって」
「そうなんですか?」
「まあ、諸説あり、だけどね。そういう説もあるらしいよ」
「でも、ウサギは卵を隠しちゃうんですよね?」
「いやいや、卵を運んでくるんだよ」
「え?そうなんですか?」
「うん。運んできたプレゼントとしての卵を家のどこかに隠すんじゃないの?」
「あ、なるほど」
そうだったんだ。どうして卵を隠しちゃうのかと思ってたけど、プレゼントだったのね?
ウサギさんが隠した卵を見つけたら願い事が叶う?……そんな風習だったかな?
まあ、違ったとしても心の中でこっそりウサギにお願いしてみよう。私たちに赤ちゃんを連れてきてくださいって。
……?
これってコウノトリにするお願いな気もするけど……。まあ、いっか。
隼人さんと話をしたら、まあいっかって思えるくらい気持ちが楽になった。
うん……そうだよね?そんなにすぐに子どもは出来ないよね?
出来ないかもしれないって可能性を考え始めると、ウジウジして暗くなるから、今はそれは考えないようにしよう。
もう少し気長に待ってみようかな。ウサギかコウノトリが運んでくるプレゼントを。
隼人さんは優しい瞳で微笑んだ。
「雪菜、阿久津さんの奥さんにも話を聞いてみたら?」
「花ちゃんに、ですか?」
「うん、子どものこと。そういうのって男の俺より、女の人に聞いた方が的確なアドバイスをもらえそうじゃん」
確かに……。羨ましいなんて思ってたけど、花ちゃんなら何でも教えてくれそう。普通なら人に言いにくいようなことも、あっけらかんと教えてくれそうだし……。
そんな花ちゃんを想像したら思わずクスッと笑ってしまった。
「そうですね」
隼人さんも微笑んだ。
「良かった、元気になったね」
「え?……はい。ありがとう、隼人さん」
「んー?お礼を言われるようなことはしてないよ」
「ううん、話を聞いてくれたから」
「そんなの当然!」
あなたは素敵な旦那さまです。あなたのそばにいるだけで、話を聞いてもらうだけで、私はあなたに救われる。あなたはいつも私を助けてくれる、私の王子様なのです。