とけるほど、抱きしめて
友達の恋
それは、何気ない日常だった。
学生時代からの友人のカナに、
勤め先近くに
素敵なカフェがあり、
通りを横切る度にガラス越しに、
スッと背の高い少し控えめで
綺麗な男性、俗に言う、一目惚れ。
一人で入れないから…。と、
彼女との待ち合わせでここに居る。
まただ。惚れっぽいんだよね。
「ゴメン!無理言って!」
「いいよ。丁度、外回りで時間空くし、
ちょっぴり休憩したいしね。」
「じゃ、行こうか!」
「ア〜、緊張、ヤバイかも」
「カナさん??緊張って?」
「プッ」笑ってしまった。
「失礼なぁ‼︎今回は違うのよ!」
「ハイ、ハイ、違う…のね。」
「また、馬鹿にして!」
「まぁね。さぁ行こうよ」
軽い気持ちだった。
その時までは。
カランカラン、ドアノブを手前に引き
中に入った。
「いらっしゃいませ。」
かわいい声の女の子。
カナ「あの子?まさか彼女じゃ無いよね?」
「バイトじゃないかなぁ?」
カナ「かなぁ?まぁいいわ。
私全力で頑張る。」
私は、ただの付き添いだから。
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
「あの、カッ、カフェラテで、」
「かしこまりました。」
「あっ!それと、オススメケーキで。」
「ハイ、セットですね。」
カウンターの中に視線を向けると涼しげな横顔の彼、カップを温め珈琲がサイフォンから…ポコポコっと心地よい音をさせふんわりといい香りが店内に充満する「なんか、あの綺麗な横顔と指先
がグッとくるのよ!」

一人テンション高め。
ほんの30分なのに、ずっと居たみたな
癒やされ空間。
私好きかも。この時間。
カナには言わないでおこう。
「名前なんて言うのかなぁ?マキ!
聞いてよ。ねぇ❗️お願い!」
「無理!」「いや!大丈夫だから!」
「何が大丈夫よ!」
そんなやり取りをよそに、彼は、淹れたてのラテをケーキと一緒にテーブルに
置いてくれた。
「お待たせしました。」くりっとした瞳で、ふんわりと香る甘い風。
カナ「あの…いつも気になっててお話ししてみたいって」
名前教えてください。あっいきなりですみません。」
「圭祐、本宮圭祐っていいます。」
みんな、圭って呼んでるよ。よろしくね。」「ラテ気に入ってくれたら、いつでも来てよ。」
なんだが、カナ赤い顔して!
黙って頷くばっかり。
「ところで君たちの名前は?」
「私は、月乃マキっていいます。この子は、松下カナっていいます。」
マキちゃんに、カナちゃん、ね。」
ランチもやってるし気軽に来てよ。」
なんだが、不思議な感覚のままお店
を後にした私達。
「マキ!私ドキドキが止まらないんだけど。恋してしまった。どうしよう!」
今度は、本気だから…」
なんだがカナの本気度ハンパ無い感がヒシヒシ伝わってくる。
あれから…カナ一人で彼、圭祐さんに会いに行ってるらしいけど、友達どまりで、
進展なし。いつもの様に、通りを渡り、
バス停まで歩くと、圭祐さんが買い物袋を持って歩いて来るのが見えた。
「あっ、今晩は。」
「えっ?えっと…マキちゃん?」
「ハイ、あれからカナお店に通ってるって聞いてます。」
「お仕事の邪魔してませんか?」
「大丈夫。大切なお客様だからね。」
「マキちゃんは、来てくれないの?」
「えっとですね。私は、仕事の帰り位しかあの道は通らないので」
「だったら、夕食、食べに寄ってよ。」
「軽い食事とお酒もやってるから、待ってるよ。」「もし良かったらこれからでもどう?」
「でも、一人だし」少し考えてた、
私の腕を、圭祐さんがグッと掴んで引き寄せた。「ゴメン!強引だったかなぁ?」
何も言えず下を向いてしまった私
引かれるままお店に来てしまった。
奥のカウンター席に連れていかれて静かに腰を下ろした。外はまだ寒いせいか
お店の暖かさが身体を温める。
圭祐さんは、ホットワインを出してくれた。「どうぞ。温まるよ。」
うんっと頷く私。ダウンライトの灯りが背の高い彼を照らして私の心が激しく音立てる。聞こえてしまうんじゃないかってくらい煩く。
テーブルに運ばれてきた。
ロールキャベツのクリーム煮とカリカリのフランスパン。
「美味しい…。」
「でしょ‼︎俺の得意料理!」
優しい瞳で私に笑いかける圭祐さん
どうしよう。圭祐さんにドキドキしてる

ダメ!ダメ!カナの好きな人だから…。





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