コンプレックスさえも愛されて。



傷付くのが怖くて、彬さんを避けた。
とは言っても、仕事以外で接点があった訳じゃないし、仕事の面では彬さんを無視して私の仕事は成り立たないものだったし。
だから、彬さんを避けているのは表向きじゃなくて、私の気持ちの中で、というのに過ぎなかったのだけど。



でも、意外にも彬さんはそれを感じ取ってしまったらしい。
元々仕事のできる頭の回転の早い人だから、私なんかが誤魔化せる相手じゃなかったのかもしれない。



ちょっといいか、と応接室に連れ込まれた残業の時間。
目の前で困惑顔の彬さんに、もの凄く不安が押し寄せてきた。




「…私何かミスしましたか?」
「なんで俺の事避けてる訳?」




重なった言葉にお互いが唖然として沈黙。
あのさ、と彬さんが口を開いたのは、それからたっぷり三分くらい経ってからだった気がする。



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