○○するお話【中編つめあわせ】


酔ってもいねーのにふらふらした情けない足取りで部屋についた頃には、居酒屋ん時に感じてたみたいな、怒りとか、なんだよそれ、みたいな、そういう感情はもうなかった。

落ち着いてるって言い方も違うけど。
変に冷静だった。

林についた嘘の言葉ぐらいで勝手に別れるとか決めてんなよ、とか思ってたけど。
でも、それは、それまでの事がすげー積もってたところだったら、仕方なかったのかもしれないとか。
冷静なのによく働かない頭で思う。

例えば、一緒に行かなくなった買い物とか。
仕事を持ち込むようになった食卓とか。
聞いてやらなくなった話とか。

見てやらなくなった目とか……受け取ってやれなかった優しさとか。

そういうのがずっと凛の中には積もっていって。
きっと凛は、声には出さなくても、苦しいってツラいって言ってたのに……ちゃんと見てやらなかった。

人と話すのが苦手なヤツだから、色々不器用なヤツだから、あいつが呑み込んだ感情とか言葉とかを拾ってやりたくて。
ひとりでため込んで欲しくなくて……俺が傍で守ってやりたくて。

だから、付き合おうって言った。

あいつの笑顔を。あいつが落とした言葉を。
一番近くで守って、拾ってやりたいと思ったから。

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