○○するお話【中編つめあわせ】
「うん。明日の夕方そっちに帰るから」
出張中、日課になっていたお母さんへの電話を終えて、ふぅと息をついてベッドに座った。
一週間、色んなホテルを転々としたけど、ホテル暮らしって慣れない。
もちろん、慣れないだけで、快適じゃないわけじゃない。
ベッドはふかふかだし、部屋だって綺麗だ。テレビだってもちろん見られるし。
それに……いくら散らかしたって、片付けろよって言う、恭くんもいない、し。
『おまえは何度言ったら分かるんだよ。俺がいないとこの部屋そのうち爆発すんじゃねーの』
そう言って呆れたように笑われたのは多分、同棲を始めてすぐの頃だったのかなと思う。
少なくともここ半年ではないはずだ。
ゴロンとベッドに仰向けになって……ぼんやりとした後、握ったままのスマホを目の前に持ち上げて眺める。
アドレス変更をしたのなんて初めてだったから、ちょっと手間取った。着信拒否も。
初めて携帯を買ってもらった時は、アドレス登録できない私を見かねた恭くんが、貸せよってやってくれたから。
アドレスを変えたり着信拒否したのは、恭くんへの意地悪だとかそんなんじゃない。
だってきっと恭くんは、私にメールも電話もしてないだろうし。
アドレスが変わった事も、着信拒否した事も気づかないんだと思う。
だから、恭くんを困らせたいとか、そういうんじゃない。
私がこんな事したのはただ、メールを、電話を、待ちたくなかったから。期待したくなかったから。