○○するお話【中編つめあわせ】


逃げたままじゃいられない事は、ちゃんと分かってる。
だから……大丈夫。ちゃんと、別れられる。

それで、恭くんが笑えるようになるなら……私は、ちゃんとできる。


アパートまでの、見慣れた道。いつも寄っていたスーパー。デザートを買いに走ったコンビニ。
恭くんのYシャツを出してたクリーニング屋さん。

そういうのを眺めながら、恭くんの後ろを歩いた。

私がちゃんとついてきてるか心配なのか、恭くんがたまに振り向いて私を確認してるのは、気配で分かったけど……私は一度も視線を合わせなかった。
だって、多分、恭くんは私の荷物をどうするかだとかそういう話をしたくて来たの、分かってるから。

それでも、約一ヶ月ぶりにふたりの部屋に入った時には懐かしさに耐えきれなくなって……浮かびそうになる涙を喉でぐっと止めた。

苦しい思い出も詰まっている部屋なのに……思い出されるのは、楽しかった時間ばかりで。

恭くんの優しさだとか笑顔が詰まっている部屋に。よみがえる、幸せな気持ちに。
鈴を握ったままの手をぎゅっと握りしめた。



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