○○するお話【中編つめあわせ】
リビングに上がったところで凛を振り返る。
自分の家だっていうのに、借りてきた猫みたいになってる凛は……林たちが言っていた通り、少し痩せた気がした。
元々細いのにそれ以上痩せてどうすんだって注意したくなるのをぐっと堪える。
今はそれよりも。何を後回しにしてでも言いたい事がある。
だから、仕事残ってんのに明日に無理やり回して定時で営業部飛び出して。
急いでんのに、社内でうっかりシスコン兄貴と会っちまって、野生の勘なのか『おまえ……凛に会うつもりだろう?!』って当てられて。
そこからは兄貴と競争するようにして凛の実家まで走った。
途中、『あ、凛!』とか兄貴が後ろ指さすからうっかり気を取られて足止めて探しちまったせいで、出しぬかれたけど。
周りの目なんか気にしねーでスーツで全力疾走してでも、言いたかった事があったから。
どうしても言いたかった事が……いや、言わなきゃなんねー事があったから。
手遅れなんかには、絶対にできなかったから。
「ごめん」
リビングの入口に立ったままの凛が、弾かれたように俺を見る。
驚きを浮かべる瞳をじっと見ながら言った。
「俺、ここ数ヶ月……いや、もしかしたらもっと。自分の仕事の事ばっか考えてた。
でかい営業エリア与えてもらったから、結果出さなきゃってそればっかで……おまえの事、構ってやれなくてごめん。
全然優しくしてやれなくて、ごめん」
「全部俺が悪い」
そう言って頭を下げる。
凛が許してくれるまで、頭を上げるつもりはなかった。
そして、すぐに許してもらえるとも思ってなかったから、しばらくこのままでいる事は覚悟してたのに。
頭を下げて数十秒も立たないうちに、凛の声が上から聞こえた。