○○するお話【中編つめあわせ】
「俺に触られんの、嫌?」
私の顔を覗き込みながら逃げ場をなくして、そんな風に聞くのはズルいと思った。
だって……ずっと見せてくれなかったそんな優しい顔。
なんで、今、私に向けるの。
部屋にいるのに。ソファーだってダイニングの椅子だってあるのに、ふたりして立ったままで。
ぐって、思いきりうつむいている私を覗き込みながら、恭くんが聞く。
「なぁ、触っていい?」
優しい音色に誘われそうになったけど、ふるふると首を振った。
恭くんは、私を好きだって言った。
今までの事、全部俺が悪いって謝ってもくれた。
本気で反省してくれてるのは、恭くんの顔を見れば分かる。
ごめん、が、嘘じゃないって分かる。
今までの事だって、本当に仕事が大変だったからなんだって知ってるし、他の女の人と何かがあったなんて思ってもいない。
恭くんがそんな人じゃない事は、私だって分かってる。
でも……いくら謝ってくれたって、何か月もかけて溜まった悲しさとか寂しさは、私の中からは消えなくて。
また同じ事を繰り返すだけかもしれないって思うと、どうすればいいのか分からない。
私だって、恭くんが好きだけど。
大好きだけど……その気持ちにただ従っていいのか、分からない。