○○するお話【中編つめあわせ】
お兄ちゃんがそんなおかげで、家を出てみたいっていう私の希望もすんなり通ったんだから、感謝するべきなのかもしれないけれど。
引っ越し当日、「凛っ、そんなにお兄ちゃんが嫌いか!?」って私にすがりついて泣いたお兄ちゃんには、ありがとうと言う気持ちにはなれなかった。
正直ちょっと引いた。気持ち悪い。
顔はまぁまぁだし、スタイルだって長身でがっしりしてて見た目は悪くないし、性格は明るくて優しい。
いいお兄ちゃんか悪いお兄ちゃんかって聞かれれば、もちろん前者だけど……でも、ごめんなさい。気持ちは悪い。
そんなお兄ちゃんのおかげで始まったルームシェアは、すごく楽しいものだった。
表向きはルームシェアだけど、正しくは同棲だなって、恭くんがいたずらっ子みたいに笑ったのを覚えてる。
その頃から、私たちは付き合っていたから。
親の手前、そして何よりお兄ちゃんの手前、誰にも言わずにこっそりだけど、確かに付き合ってた。好き合ってた。
話し下手な私を、『ゆっくりでいーからな』って安心させてくれる笑顔とか。
待ってくれてたのに結局何も言えずに口を閉じる私の頭を、『仕方ねーな』って撫でる厚い手のひらとか。
低く色っぽい声で呼ばれる名前とか。
私よりも一回りも二回りも大きな身体も、お風呂がすごく短いところも、それなのに私には風邪引くからってちゃんと入れよって叱るところも。
挙げたらキリがないけど、私は恭くんが好きだし、恭くんも……私を好きだったんだと思う。
……うん。
多分、好きではいてくれてた。
自信はないけど……多分、今も。