○○するお話【中編つめあわせ】


「やだな……」とつい本音を呟くと、天井を仰いでいた恭くんが驚いたような顔して私を見た。
でも、すぐに笑顔になる。

「俺も。だから……もう少しだけ、秘密にしてるか」

「その間に見合い話とかこない事を祈りながら」って苦笑いを浮かべる恭くんに、ふふって笑う。

「恭くんの方こそ、また喫煙室で言い寄られるよ、きっと」

別にイヤミとかじゃなくて、田坂さんの例もあるしって事で言っただけだったけど。
私の言葉に、恭くんは「あ、俺、煙草やめたから」って驚きの回答をした。

「え……っ」
「凛、匂いダメそうだったし、確かに身体にも悪いし。
営業んなったら周りがみんな吸ってたから、なんとなく吸い始めたけどもういいやと思って」
「……やめられたの? だって、禁煙ってキツイって……」
「俺はもともとそんな本数吸うわけじゃねーし、そこまででもなかったけど。まぁ、多少イラつきはしたけどな。
さっきキスした時だって、苦くなかったろ?」

そういえば……そうだったかもしれない。
キスしながらされた事の方に気が紛らわされちゃって、よく覚えてないけど……。

「煙草吸ってる間、キスした後、おまえ何も言わなかったけどいつも微妙な顔してたから嫌なんだろなーっていうのは分かってたし」

なるべく顔には出さないようにしてたのに……。
気付いてくれてたんだって思うと、嬉しくなる。

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