二度目の恋の、始め方
まさかあの時、一店員の自分が誰かに見られているとは微塵も思わなかったし、メイクグチャグチャの汚れた涙を綺麗だと言ってくれるなんて、誰が予想できるの。
……だけど、私が葉山クンを苦手なのは変わらなくて。
「離してください!それにあなたの前では絶対泣きません!」
「上等。泣かせてやるよ」
「っ、!」
それに普通の人が言わないようなことをサラッと言ってのける葉山クンは、私の手首をさっきよりも強い力で掴む。そしてその綺麗な顔をゆっくり近付けてくるので、咄嗟に顔を背けて瞼を閉じたその時、
「……にやってんだよ、イツキ」
聞き覚えのある低い声。
葉山クンの身体がピタリと止まって、私も声のした方へゆっくり瞳を動かした。
「へぇ珍しいね。ここ、普通科なのに」
「職員室に用事。つーか、この状況でソレはあんまりじゃねぇの?」
人混みの中から現れた雄大の登場で、周りは更に悲鳴と歓声に湧く。制服は清潔感を損なわない程度に着崩されていて、ふわふわの茶髪はこの名門校で唯一、彼だけが許されている彼だけのトレードマーク。
「あ、壱樹がま~た女の子泣かせてる~」
その隣に居るのは、凄く可愛い女の子。
壁に追いつめられている私を見て、呆れたように眉を寄せた女の子は大きな瞳に高い鼻、ぷっくりした桜色の唇。ゆるくウェーブのかかった黒髪はまるでお人形のよう。