二度目の恋の、始め方
背中は冷たい壁。昼休みの、人通りの多いこの廊下で、あの葉山クンに壁ドンされているせいで周りには色めき立つ生徒が集まり、歓喜と悲鳴が飛び交っている。
「み、……皆見てます……恥ずかしい」
「泣いてよ。あの時みたいに」
「え?」
「アイツの前ではあんなに綺麗な涙流すのに、俺の前では泣けないわけ」
そう言って至近距離で私を見下ろしてくる葉山クンの言葉の意味が、分からない。それでも迫ってくる綺麗な顔に翻弄され、考える余裕なんてあるはずなくて。
「……意味分かんない……」
「この間、カラオケで泣いてた」
「あ、あの時……居た、んだ……」
「今まで散々泣かせてきたけど、あの時初めて、女の涙を綺麗だと思ったよ。それとも雄大の前でしか流せない涙ってやつ?」
「……違います。あの時はたまたま……」
「へぇ。残念。もしそうなら余計ソソるのに。俺の下でどんな風に鳴くのか、極限までイジメれば、分かるかもしれない」
とんでもない事を言って、面白そうに口角を上げる葉山クンに身体が震えた。