二度目の恋の、始め方

「それより凛に、話があって…………」

「話?」

「杏子ちゃん、みっ~け~」

突然に目の前に登場した人物は、きょんの背後から現れるとすぐさまきょんを後ろから抱きしめる。その光景に驚きのあまり目を見開いている私に、頬を赤く染めたきょんは言いにくそうに視線を泳がした。

「実は理玖君と付き合うことにしたの」

「えぇ!?」

「そういう事~。ごめんね、りんりん」

そう言ってきょんのストレートの黒髪を掬ってソコにキスを落とすのは紛れもなく、彼女が1ヶ月以上続いた試しがない理玖ちゃんの姿。中学三年間同じクラスで理玖に金銭面で潰された女の子は数知れず。
いつの間にそういう関係になったの?

「ほら。この間、凛が葉山君に拉致られた日、その時に理玖君から付き合おうって」

「理玖ちゃん!きょんを誑かしたの!?」

「誑かしたって酷いな~。確かに付き合ってみる?って聞いたのは俺だけどオーケーしたのは杏子ちゃんだしね~」

「……反対。私は絶対反対です!」

ばんっ、と机を叩いて立ち上がった私の怒りに満ちた顔を見ても、理玖ちゃんは顔色一つ変えずにきょんを抱きしめたまま。この間のヒョウ柄好きの女の子と別れたらしい理玖は今日は至ってシンプルで、きょんの影響で少し落ち着いたように見えた。

「杏子ちゃんどうするの~。お友達、ああ言ってるけど」
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